多くの企業にも重要視され始めたKYC(Know Your Customer)とは?

企業におけるKYCの重要性は年々高まっていると言えます。さまざまな手続きにおいて本人確認を行うケースは需要を増しており、KYCの重要性は企業内において浸透しているのです。そのため、KYCの重要性について企業は今一度認識を深めることが必要であると言えるでしょう。

本記事では、企業におけるKYCの重要性について解説します。

KYCとは

KYCとは、Know Your Customerの頭文字から称されており「顧客を知る」の意味合いで本人確認手続きのことであるとされています。これまでにおいて、KYCは金融機関口座開設およびローン申込み時などにおいて主として活用されて来ました。

しかし、昨今では快適なインターネット環境が構築されていることを背景として、インターネットにおけるオンライン上でさまざまな取引を完結することができる環境が構築されています。それらに伴い、従来では金融サービスがKYCの主たる適用シーンでしたが、金融サービス以外でもさまざまなシーンにおいてもKYCが適用されるようになったことから、kycの必要性は従来と比較すると増加傾向にあると言えるのです。

KYCの適用シーンの具体事例としては、金融機関で実施する目的は口座開設時に資金洗浄と呼ばれるマネーロンダリングなどの犯罪を防止することです。また、クレジットカード会社などで実施する目的は与信審査および反社チェックを行うことです。昨今では、金融機関やクレジットカード会社でもKYCが行われていますが、別の側面ではマッチングアプリやホテルなどのアカウント登録などでもKYCが適用されています。KYCの本質は、口座開設・与信審査・アカウントなどのさまざまなシーンにおいて、行為を行おうとしている者が本人であるかどうかを適切に確認することを主たる目的としています。

本人でない者が、他人になりすましてさまざまな行為を行うことで、犯罪やトラブルが助長されてしまう結果となってしまいますので、それらを未然に防ぐことが最大の目的であると言えるのです。

企業におけるKYCの必要性について

企業におけるKYCの必要性とは、ユーザーを守ることであると言えるでしょう。口座解説など、さまざまな行為を行おうとしている者が本当に本人であるかどうか確認することで、ユーザーが犯罪やトラブルに巻き込まれないよう未然に防止することができます。

また、別の側面としては企業のリスクヘッジを目的としてKYCの必要性が高いと言えます。KYCを行っていなかった結果、なりすましおよび不正利用が発覚することで、取引で生じた利益を損失するリスクが高まります。また、それだけに留まらず個人情報が流出するケースとなると、企業における社会的信頼度は失墜します。これらの事実により、企業における顧客離れや将来的な成長期待度は大きく損なわれることとなるでしょう。

このように、企業におけるKYCの必要性は極めて高いものであると言えるのです。

KYCの種類について

KYCの本質は、口座開設などの行為を行うものが本人であると確認し、実在していることを明確にする手法です。
一方、上述したように個人に対して行うKYCとは別に法人に対して行うKYCというものもあります。一般的に行うKYCは個人に対して行うケースの方が多くなっており、KYCは身元確認および当人認証の2種類に大きく分類することができます。

ここからは、KYCの種類について詳しく解説します。

身元確認

身元確認は、企業などにより求められて身分証明書などを提示し、個人を特定するさまざまな情報を確認することです。なお、個人を特定するための情報には、名前・住所・生年月日などが挙げられます。運転免許証などの身分証明書を確認することで、個人を特定するためのさまざまな情報を確認することで、さまざまな行為を行おうとしている者の犯罪歴およびリスクチェックを可能とします。

また、身元確認には運転免許証などの身分証明証に記載されている住所に実際に居住しているかについても確認することが多くなっています。確認した住所あてに、転送不要の郵便で書類を送付することや、実際に足を運んで訪問するなどを行い、居住している事実確認を行うのです。

当人認証

当人認証は、さまざまな行為を行おうとする者が本当に本人かどうかを確認することを目的として行われます。事例を上げると、利用者に対して与えたIDとそれに関連付けるように設定したパスワードを入力することで本人確認を行ったりすることです。
上述したような、IDおよびパスワードのみで本人確認を行う行為を単要素認証と称します。

昨今では、上述したIDおよびパスワードに追加する形で指紋および顔などの識別を行ったうえで本人確認を行うなど、生体的特徴で当人認証を行う手法である生体認証も一般的となっています。
また、上述した当人認証に加えて運転免許証やパスポートなどの公的機関で発行されている証明書の提示を求める複数要素を複合させた本人確認は多要素認証と称されています。

KYCが実施されるタイミングについて

KYCは、確認の方法だけではなくタイミングも極めて重要であると言えます。KYCを行うタイミングが適切であれば、さまざまなリスクヘッジに役立てることができるでしょう。ここからは、KYCを行うタイミングについて詳しく解説します。

アカウントおよび口座開設時

KYCが行われる最も多いシーンは、新規ユーザーが各種サービスアカウントおよび口座新規開設時であると言えます。KYCにより、身元確認および当人認証を行うことでユーザーのさまざまな情報を取得して本人確認を行います。また、それらの情報を基本として犯罪歴および与信情報についても確認を行い、サービス提供をしても問題ないのかどうかを審査します。
このように、企業にとった新たなユーザーとして登録するタイミングでKYCを行うことが重要です。

継続的顧客確認時

KYCは、企業にとった新たなユーザーとして登録するタイミングだけでなく、ユーザーのサービス開始時より一定の期間を経たあとに行うことも重要であり、これを継続的顧客確認と称しています。継続的顧客確認の主たる目的は、サービス提供開始時と比較して現在のサービス利用状況が変わらずに本人と同一人物であるかどうかを確認することです。また、登録時において取得した住所や電話番号などのさまざまな情報が変更されていないかどうかも確認します。本タイミングで行うKYCにおいて各種情報が変更されていた場合は、変更後の新たな情報をユーザーより提供してもらうことも目的としています。

このように、ユーザーに対して情報の更新を促すだけでなくだけではなく、長年に渡って使用されてない口座およびアカウントがあるのであれば、それらを乗っ取られて犯罪に巻き込まれていないかを確認することでリスクマネジメントの側面も持ち合わせていると言えるでしょう。

KYCが準拠する法律について

昨今では、KYCはさまざまな企業によって行われています。KYCが多くの企業で適用されることとなった背景としては、ユーザーにさまざまなサービスを提供するにあたって本人確認を行うことの重要性が高くなったからだと言えるでしょう。また、KYCを行うことで不正を防止するだけではなく、犯罪行為などが発覚した際はユーザー情報をトレースしやすいというメリットもあります。

一方、昨今において増加傾向にあるシェアサイクルおよびAirbnbなどのシェアリングエコノミーなどにおいてもKYCは適用され、犯罪および不正の抑止力となっています。なお、適切なKYCの実施を確認する方法としては、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)によって定義づけられている要件を満足しているかどうかで判断することが可能となっています。

ここからは、犯収法について詳しく解説します。

犯収法

犯収法とは、犯罪による収益の移転防止に関する法律の略称となっています。2007年に施行された法律であり、資金洗浄と呼ばれるマネーロンダリングおよび土地名義の不正変更などが社会的に大きな問題となった際に制定されました。なお、犯収法では銀行などの金融機関および貴金属を扱っている特定事業者に対して本人確認を行うことが義務付けられています。

昨今においては、銀行などの金融機関および貴金属を扱っている特定事業者だけに限定されず、さまざまなサービス事業者においてKYCの必要性が求められており、本人確認を行うルールについては犯収法を準拠しているところが多くなっています。

まとめ

ここまで、企業におけるKYCの重要性について解説しました。KYCとは、時代の変遷によって犯罪防止などを目的として本人確認を行うことの重要性が浸透してきた結果、現在の社会においてその必要性が唱えられています。また、KYCを適切に行うことで企業のみならずユーザーを守ることにも繋がっているため、犯収法を準拠して正しく行われることが強く求められているのです。本記事が、KYCを行っている企業にとって一助となれば幸いです。