FATFとは?政府の動向に着目して企業はFATF基準を遵守しましょう!

世界的な社会情勢を見ると、戦争などを代表としてさまざまな争いが起こっており、全世界が平和であるとは言い難いものとなっています。戦争などもそうですが、世界的にはさまざまな犯罪行為が行われており、犯罪組織に資金が流れている事態も存在します。世界ではそれらの事象は由々しき事態であるとの認識の下、日本においてもさまざまな対策を講じる必要があると強く訴えかけているのです。
そのため、日本の企業は世界から日本に求められている内容に対して政府がどのような動向を取っているのか把握し、さまざまな犯罪抑止対策に関する規制等について遵守する必要があるのです。
本記事では、企業がFATF基準を遵守しなければならない理由について詳しく解説します。

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FATFについて

FATFとは、「Financial Action Task Force」の頭文字から称されており、金融活動作業部会のことです。1989年において、アルシュ・サミット経済宣言を受けてマネロン対策の国際基準策定および履行を担う多国間枠組みとして創立されました。2001年には、世界中を震撼させた米国同時多発テロ事件が発生しました。その任務にテロ資金供与対策が追加され、さらに2012年2月のFATF勧告改定により大量破壊兵器の拡散に関する資金供与対策等が追加され現在に至ります。
FATFの活動指針としては、FATF担当大臣が承認するFATFマンデートにおいて定義づけられています。37か国・地域と2地域機関がFATFに加盟しており、年3回の全体会合でFATFの活動に関する事項が意思決定されます。
FATFは、その時々において国際基準の遵守が不十分な国や地域を特定し、改善状況をモニターするため、行動要請対象の高リスク国・地域(通称:ブラック・リスト)および強化モニタリング対象国・地域(通称:グレイ・リスト)を公表しています。
世界の地域ごとに、9つのFSRB(FATF-style regional bodies:FATF型地域体)が設置され、FSRBに加盟する国および地域もFATF加盟国と同様にFATF勧告に則った相互審査を実施しており、FATF勧告は世界200以上の国・地域に適用されています。

アジア・大洋州地域に設置されているFSRBは、APG(Asia/Pacific Group on Money Laundering)がシドニーに存在し、日本はAPGにも加盟し、APGの活動に参加しています。

FATFに関する政府の取り組み

政府としては、当該報告書の公表を契機として、政府一体となってマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に取り組むため、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を設置しました。当該会議で決定された「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」および「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」に沿った取組を進めています。

FATFが重要視される背景

依然として厳しいテロ情勢や大量破壊兵器の開発等が継続するなど、国際社会及び我が国の安全への脅威が高まる中、日本は国際社会と連携しつつ金融制裁措置等を実施する必要があるとされています。技術の進展に伴い、暗号資産等が違法な活動に利用されるリスクが増大しており、国際社会全体で対策の強化が必要とされているのです。
そのため、日本においてもFATFが発信するあらゆる情報を重要視しています。

FATFの日本に対する審査指摘内容

FATFは、マネロン・テロ資金供与・拡散金融(大量破壊兵器の拡散に寄与する資金の供与)対策のための国際基準の策定・履行の審査を担う多国間の枠組み(1989年のG7アルシュ・サミットでの首脳間合意に基づき設立)として確立されています。 FATF基準の遵守は200以上の国・地域がコミットし、国際社会ではグローバルスタンダードであるFATF基準を各国が遵守することにより、世界全体でのマネロン等対策の実効性の確保を図っているのです。

昨年8月にFATFが公表した第4次対日審査報告書では、日本の対策を一層向上させるため資産凍結措置の強化・暗号資産等への対応の強化・マネロン対策等の強化のための法改正に取り組むべきと勧告しています。日本を重点フォローアップ国として、指摘事項の改善状況を3年間毎年報告するよう義務付けたのです。速やかな対応の必要性としては、対応が遅れた場合には日本との金融取引に対する懸念が強まり、国際金融センターとしての地位が低下する可能性が懸念されています。また、マネロン等対策で日本が抜け穴となれば国際的な対応に支障が生じるとされています。

上記勧告を踏まえ対応を強化するため、内閣官房よりFATF勧告対応法案(4省庁6法の一括法案)を臨時国会へ提出されました。

FATF指摘内容を考慮した法改正について

FATFの勧告に対応するため、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に係る国際基準への対応などを踏まえた法改正案が検討されました。

なお、具体的な内容は次のとおりです。

1.資産凍結措置の強化

拡散金融への対応として、安保理決議で指定された大量破壊兵器拡散に関わる者が行う居住者間取引(国内取引)に対する資産凍結ができるようにする国際テロリスト財産凍結法が検討されました。

これまでは、国際テロリストを対象として居住者間取引では財産凍結法および対外取引では外為法の適用・大量破壊兵器関連計画等関係者を対象として対外取引では外為法が適用されていました。

しかし、本改正により大量破壊兵器関連計画等関係者を対象として、居住者間取引で措置が取れることとなったのです。

2.マネロン対策等の強化

1)マネロン罪の法定刑引上げとして、犯罪収益等隠匿罪、薬物犯罪収益等隠匿罪等の法定刑を引き上げるため、組織的犯罪処罰法および麻薬特例法が改正されます。

2)犯罪収益等として、没収可能な財産の範囲の改正として犯罪収益等が不動産・動産・⾦銭債権でないときも没収を可能とするために組織的犯罪処罰法が改正されます。

3)テロ資金等提供罪の強化として、各罰則について、資金提供罪等の対象として、現行の「公衆等脅迫目的的の犯罪行為」と同等のものを条約の文言に合わせて追加するとともに法定刑を引き上げるために、テロ資金提供処罰法が改正されます。

4)法律・会計等専門家の確認義務等に係る規定整備として、法律・会計等専門家に係る取引時の確認事項に取引目的、法人の 実質的支配者等を追加するとともに、疑わしい取引の届出義務に関する規定を整備するために犯罪収益移転防止法が改正されします。

3.暗号資産等への対応の強化

1)暗号資産等に係るトラベルルールとして、暗号資産交換業者に対し、暗号資産の移転時に送付人・受取人の情報を相手方業者に通知する義務(トラベルルール)を課すために犯罪収益移転防止法が改正されます。

2)暗号資産交換業者等による資産凍結措置の態勢整備義務として、暗号資産交換業者、銀行課すために、外為法が改正されます。

3)ステーブルコイン取引への対応(資産凍結)として、新たな資産形態であるステーブルコインに関する居住者・非居住者間の取引に対する資産凍結を強化するために外為法が改正されます。

FATF勧告対応法案で改正予定の法律一覧

(内閣府資料から抜粋)https://www.cas.go.jp/jp/houan/221026/siryou1.pdf

まとめ

ここまで、企業がFATF基準を遵守しなければならない理由について詳しく解説しました。FATFとは、世界平和を大義名分としてさまざまな活動を世界規模で行っています。それらの行為は世界からも認められているものであることから、今回のように日本に対して私的された対日審査報告書の内容は、日本政府が威信をかけて対応策を講じているところなのです。そのため、さまざまな法改正が検討されており内容によっては企業にとって大きな影響を及ぼすものもあるでしょう。

しかし、気儀容としてはFATFの指摘内容に基づいて日本政府が取り組もうとしていることに同調し、遵守しなければならないことを念頭においていただきたいと思います。本記事が、企業においてFATFの重要性を再認識するための一助となれば幸いです。