【KYC コラム】レッグテックソリューションの今#3

 KYCコンサルティングは、自社が提供するコンプライアンスチェックツール「RiskAnalyze」(リスク アナライズ)と他社サービスとの連携による、サービス機能の拡張を図ってきました。2020年12月、名刺管理サービス「Sansan」上でオプション機能として、RiskAnalyzeのコンプライアンスチェックの提供を開始しました。また、2021年11月、「Salesforce」上でもオプション機能としての追加が可能となりました。

 「Sansan」は、Sansan株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:寺田 親弘、以下Sansan)が運用する法人向けクラウド名刺管理サービスです。「Salesforce」は、株式会社セールスフォース・ジャパン(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:小出 伸一、以下Salesforce)が手掛けるCRM(顧客管理)ソリューションサービスです。

 本コラムは、前述した2社のサービスとRiskAnalyzeとの連携にはどんな狙いがあったのかを解説します。連携することよるサービス提供事業者の利点や、顧客企業の利点についても言及します。

Sansan株式会社について:https://jp.corp-sansan.com/company/info/ 

株式会社セールスフォース・ジャパンについて:https://www.salesforce.com/jp/ 

1. どんな狙いがあって連携したのか

 KYCコンサルティングは、「コンプライアンスチェックの社会インフラ化」をミッションに掲げています。このミッションを達成するために、どのような方法で社会に対して認知や理解を広めていけばいいのかを考えました。その中で着目したのが、企業情報を管理するサービスやシステムです。

 上場を目指す企業の70%以上※1が、契約締結のタイミングで反社チェック(コンプライアンスチェック)を実施しています。コンプライアンスチェックには理想のタイミングがあります。早ければ早いほど意味があり効果がある、と当社は考えています。トラブルの未然防止、リスク源の早期検知へつながるからです。営業ロスを大幅に軽減することもできます。

2. 法人向け名刺管理サービス市場で82%のシェアを誇る「Sansan」

 早期チェックの実現に向けて、名刺管理サービス「Sansan」との連携を図りました。同サービスの利用者は、名刺交換した時点でサービスを活用するため、同じタイミングでコンプライアンスチェックを実施できれば、取引前、しかもかなり早期の段階でリスクを回避し、トラブルを未然に防ぐことができます。「Sansan」は、法人向け名刺管理サービス市場で82%※2のシェアを誇っています。ですから、コンプライアンスチェックの必要性を広く知らしめるために非常に効果的です。それだけでなく、多くの利用者にサービスの優位性を示すことができます。

3. CRM領域で世界シェアNo.1の実績を誇る「Salesforce」

 同じ理由でCRM(顧客管理)ツールとの連携が重要だ、ということは言うまでもありません。CRM領域で世界シェアNo.1の実績を誇る「Salesforce」との連携によって、多くの利用者にコンプライアンスチェックツールの有効性と実用性の高さを示すことができます。利用者は新規候補企業の営業管理を「Salesforce」上で行います。新規候補とは、ウェブサイトでの問い合わせや各種イベントで接点を持った企業、自社からアプローチ予定の企業などのことです。これらの企業を登録したタイミングでコンプライアンスチェックが実施されます。リスクのある企業を早期の段階で営業先や取引先の対象から外すことで、営業に費やす時間や費用が削減できます。つまり生産性を高めることにつながります。

 「Salesforce」利用者は、同社が提供するビジネスアプリケーションマーケットプレイス「AppExchange®」から、コンプライアンスチェック機能を追加することでRiskAnalyzeを利用できます。

※1参考資料:株式会社ロードマップ 「企業の反社チェックに関する実態調査」(2022年)

※2参考資料:営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2023 (2022年12月 シード・プランニング調査)

4. リスク情報を文章要約 照会結果の取得までの全工程を1分で処理

 KYCコンサルティングとの連携における特有性は、リスク管理の業務工程を大幅に短縮できる点です。それを可能にするのが、独自のアルゴリズムと専門家によって精査されたリスク情報提供データベース「Solomon」(ソロモン)です。詳しくは、前回コラム「KYCコンサルティングのコア・コンピタンス『Solomon』とは?(後編)」の中で触れています。

 リスク管理を行う手段は、主に三つあります。一つは手作業による情報収集と管理です。もう一つがチェックツールを利用した管理、そして三つ目が自社システムにチェック機能を実装した自動管理です。

 1,000件のコンプライアンスチェックを手作業で行う場合、費やす時間は約40時間です。同じくRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールでも約10時間を要します。多くの時間が割かれる一番の要因は、コンプライアンスチェックにおける情報収集後の文章読解の部分です。RiskAnalyzeは、Solomonを活用してリスク情報を文章要約できるため、照会結果の取得までの全工程を1分で処理します。さらに企業ごとのリスク管理工程に合わせて、自社システムのプログラムとSolomonのデータベースをAPI連携することで、自動的にコンプライアンスチェックが実施できます。

5. 健全な経済取引の環境づくりに貢献する企業

 連携先企業にとってみると、既存サービスに新たなオプション機能が拡充されます。機能拡充により自社顧客の取引先チェックの効率化や、健全な取引を支援することにつながります。さらに健全な経済取引の環境づくりに貢献する企業とみなされ、その付加価値の高い取り組みへの評価が高まります。

 RiskAnalyzeの高い利便性を誇る部分として強調したいのが、連携先企業が既存サービスにオプションとしてコンプライアンスチェック機能を実装できる点です。しかも負担のない形態で利用者に提供できるのです。

 私たちKYCコンサルティングは、さまざまな業界や分野においてリスク管理の必要性を広げていくことが重要なミッションの一つです。より多くの企業・サービスと連携を図ることで、コンプライアンスチェックの普及をこれからも推進します。