反社チェック取引判定基準設定と運用体制の整備 ②

お客様からいただく、反社チェックにおけるお悩みやご相談事例について共有し、より良い取引判定基準や社内体制の構築に役立つ情報を皆様にお届けしたいと思います。

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反社チェックにおける「同一性の確認」の難しさ

今回は「同一性の確認」についてです。反社チェックにおいて、同姓同名、同じ企業の名前などが該当してしまった場合には判断に迷います。得られる情報やかけられるコストにも限界があるため、個別の事例をもとに対応しなければなりません。

個人の場合

個人の氏名で同姓同名の場合、下記のような情報が得られるかどうかがポイントです。

  • 生年月日
  • 住所
  • 経歴(職業等)

上記の情報が全て揃って得られるのは「履歴書」を提出いただく時くらいで、WEBサービスなどを運営している企業では「入力情報が多いと、途中で離脱が増える」ということもあり、あまり多くの情報を取得することは望めません。生年月日が一般的に同一性の確認として多く利用されますが、免許証取得時に同姓同名、同生年月日の方がいるという注意をされる方がいらっしゃるように、完全な同一性の確認とは言えません。

◆法人の場合

法人の場合は個人の場合と比べ、下記のようにもう少し広く情報を取得することが可能です。

  • ホームページ
  • 法人番号
  • 電話番号

上記の情報が入手できますが、企業名称を変えたり、事業を新会社に移して登記を変更したり、やろうと思えばいろいろできてしまうので、判断するにはより難しい問題となります。また、法人口座の開設等には「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等に基づき、実質的支配者についての確認が必要になる場合がありますが、こちらは自己申告によるところが大きく、虚偽の申告がされている可能性があるのが実情です。

「同一性の確認」ができない場合、どのように取引判断すべきか

では、具体的にどう対応すればよいのでしょうか。正解はありませんし、個別の事情があるということは前提としながら、ご提案としては「監視対象」とすることをお勧めしています。全てに白黒つけることはどんな状況でも難しいことであれば、「グレーとしてきちんと見ていく」というモニタリングの仕組み・体制が必要なのではないかと思っています。

実際の事例としては、取引自体はお断りはしないものの、一部の取引を制限したり、金額を制限するという対応設定するというケースがあります。アカウントに取引制限を設け、何か取引行為が発生する際に担当者だけで判断しないように、上長や責任者の承認フローを設定しておくということです。もちろん、対象の新しい情報の取得などにより「グレー」から「白黒」へ判断するために定期的に見直しも必要です。

取引判断後の社内運用体制の強化

その際も重要なことは、「企業としてどのような取引であれば対応してもよいか」ということについて日頃から社内で情報共有する、コンプライアンスの事例に触れる研修を行うなどの対応が必要ではないかと思います。「取引判定基準設定や運用体制は1日にしてならず」だと思いますので、日々の鍛錬と易きに流れない意志が企業として問われているような気がします。

弊社では第三者としての立場、お手伝いさせていただいている企業様の事例などを基に、リスクマネジメントについてご相談を承っております。(一部無料、他別途御見積)お気軽にお問い合わせください。