反社チェック取引判定基準設定との運用体制の整備 ①

お客様からいただく、反社チェックにおけるお悩みやご相談事例について共有し、より良い取引判定基準や社内体制の構築に役立つ情報を皆様にお届けしたいと思います。今回は、「暴力団と疑われる情報があった場合にはどう対応するか」です。

反社チェックポイントと判断の難しさ

あるお客様より「暴力団として疑われるような情報が見つかったが、詳細について調査してほしい」というご依頼があり、調査させていただきました。

今回の反社チェックのポイントは、以下の通りでした。

  • 暴力団と記載があるが存在する組織かどうかが不明
  • 逮捕記事の信用性
  • 更生の可能性、同姓同名の可能性

今回の事例は、過去の事件で大きなニュースとして取り上げられておらず、複数の情報源を参照しても特定できませんでした。また、該当情報もすべての情報から確認することができず、クライアント様で一部情報の正確性が担保できなかったため、弊社にて詳細情報の調査となりました。今回はお取引における可否判断だったわけですが、社内のチェック体制がよく機能しており、判断に迷われるポイントとして納得できる内容でした。

暴力団と取引することはもちろん避けなければいけないことですが、元暴力団員の方の更生可能性や同姓同名のリスクなどは当然排除していかなければいけないので、各企業によっても判断の分かれるところかと思います。

反社チェック及び取引判定基準を持つことの重要性

元暴力団員との取引開始基準の例としては、以下が挙げられます。

  • 暴力団員として足を洗ってから5年以上経過していること
  • 正確性が疑われる場合には取引猶予、取引監視、として情報取得に努めること
  • 別途、取引開始におけるルールに照らして、別情報の提供を求めること

重要なことは、反社に対して「自社がどのようなポリシーを持っているか」だと思います。

冠婚葬祭サービスを提供されているある企業では、元暴力団員の更生可能性を強く意識しており、一定の基準を設けて元暴力団員の僧侶とお取引をされていたり、また、趣味サービスを提供されているある企業では一定の監視要件を設けて暴力団を離脱された方と日常取引をされていたり、一律に反社との接点を不可とすることも可能な中、地域社会や自社の基準をしっかりお持ちになって対応されているケースがあります。

社会的な要請としては、暴力団排除という観点から暴力行為や犯罪行為に関わるような組織や人に対して、市民の生命身体・生活や財産を守るという側面があると考えられます。企業として守るべき利得が大きい場合には、反社に対するチェック機能や体制も厳重化しますが、すべての企業がそこまでの体力や資源があるわけではないと思います。その中でいかに社会的な要請を理解して、どのような基準で、どの程度対応していくかを決めることが「自社のポリシー」です。

自社のポリシーを決めていく際に、重要なことは「自社だけに通用する基準となっていないかどうか」です。社会的な要請として企業に対して「お願い」されている基準はどの程度のものなのか、同業界や同規模の他社と比較して著しくチェックの機能が劣っていないか、また、社会情勢や事業環境に即した基準であるかなどがポイントです。

上記のように自社だけで対応することが難しい場合もあるため、社外の第三者と一緒に基準を作る、または定期的に見直していくということが必要なのではないかと思っています。

取引判断後に対応すべき事柄と運用体制の整備

今回の事例からもう一つ、「基準に照らして判断した後どのように対応するか」も重要なポイントです。取引をする・しないを決定した後に、対応しておいたほうが良いこととして、以下が挙げられます。

  • 判断結果やその根拠の記録を残す
  • 将来、同様事例が発生した場合の対応策の検討
  • (取引可なら)モニタリングの仕組み作り
  • (取引不可なら)取引をお断りする仕組み作り

特に「モニタリング」や「お断り」については、社内に蓄積していくべき情報であると思いますし、上場準備等で既存の取引先調査を行った際に、暴力団と疑われる情報が見つかってしまった際にも同様な対応が求められます。

自社のポリシーとともに、そのポリシーを維持・運用できる「体制」が同時に必要になります。業務フローや社内の顧客管理とも関わる領域になるため、上場準備などのタイミングで本格的に対応される企業が多いのですが、付け焼刃的な対応にならず、将来の事業拡大にも柔軟に対応していけるような体制を模索していくことが重要と言えます。    

反社会的勢力・犯罪の多様化、ビジネスの国際化、情報技術の進化などにより、将来にわたってすべての不正な取引を遮断する方法というものはないと思います。リスクマネジメントという観点で経営における議論の一つとして常にアップデートされている状態をつくることが大切だと思います。

弊社では第三者としての立場、お手伝いさせていただいている企業様の事例などを基に、リスクマネジメントについてご相談を承っております。(一部無料、他別途御見積)お気軽にお問い合わせください。