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【反社会的勢⼒の実態と企業リスク #2】香川県に本店を置く地方銀行の百十四銀行、信用実績を重んじる公的立場としての背景 回復困難な状況まで、失墜を恐れて公にせず

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 第2回は、株式会社百十四銀行の過去の事例をもとに企業のコンプライアンスやガバナンスが問われる事件について、次の三つの観点から解説します。

 1)どんな経緯で反社とつながったのか

 2)どうすれば反社とつながらないよう、未然に防げたのか

 3)教訓とすべきことは何か

 百十四銀行は、1878年(明治11年)11月、国立銀行条例に基づいて設立された国内に現存する数少ないナンバー銀行の一つです。1898年(明治31年)10月、第百十四銀行が営業満期により国立銀行から普通銀行(株式会社高松百十四銀行に改組)へ転換し、1948年(昭和23年)6月、「株式会社百十四銀行」に商号変更しています。その後、1973年(昭和48年)8月には、東証・旧大証に一部上場を果たします(現在:東証プライム)。

事件の概要

 百十四銀行九条支店(大阪市西区)は、2007年~2008年にかけて、回収見込みのない不動産会社に対して、約10憶円の不正融資を行いました。この事件を受けて、2009年、同銀行の内部管理態勢にも問題があるとして、金融庁より業務改善命令を受けました。その後の調査により、同行の元支店長と融資先の実質経営者である元暴力団組員が共謀し、同行に損害を与えたとして、会社法の特別背任容疑で実刑判決が下りました。

1)どんな経緯で反社とつながったのか

 銀行本来の事業は、個人や企業からの預金で融資を行うことです。公共的な役割を担う立場であるため、社会からの「信用」実績の評価に重きが置かれています。そのため、評価の下がるような組織内部の問題や不正などが公になることを避け、内密にされる傾向があるといわれています。今回の不正融資の事件についても、行員による個人利益の追求や反社とのつながりなど、銀行の信用を失墜させる不正であることから、回復困難な被害状況に陥るまで公にし難い背景があったと推察されます。

 不正融資は、虚偽の決算書や売買契約書の作成、保有資産明細の水増しなどを行い、融資する、または融資を受けることを指します。銀行業界における利益の追求や業績至上主義によって、支店や個人が業績を上げるための手段として不正に融資を行い、それが結果的に反社会的(反社)組織とのつながりを生む要因となった、と考えます。前述の背景に加えて、支店長の立場を悪用した、不正や賄賂などの受け取りによって、組織に取り込まれ、関係を断ち切れない状況に陥ってしまったのでしょう。

2)どうすれば反社とつながらないよう、未然に防げたのか

 銀行の管理体制として、融資の事前審査にコンプライアンスの調査体制を確立していれば、行員によって不正な融資が行われる場合でも、融資先が反社に該当する企業であることを事前に把握でき、決裁の却下ができたのではないでしょうか。

 百十四銀行は事件後、2010年2月、今後の社内管理対策として、反社に対する基本方針を定めました。具体的な内容は、「反社会的勢力による被害を防止するための規定」の制定、対応方針に関する周知、警察・暴力追放運動推進センター、弁護士などの外部専門機関と連携した反社との関係遮断などです。各金融機関においては、各種約款などに暴排条項を導入したり、反社データベースなどを活用した事前調査を行ったりと、コンプライアンス管理体制の強化を図っています。

3)教訓とすべきことは何か

 銀行が行政処分を受けたことで社会全体に、その事実が周知されました。風評被害による、企業価値や信用の低下による企業の損失は計りしれません。今後は、社内のコンプライアンス管理体制を確立した上で、反社との接点を遮断する場合においても、さまざまなリスクを想定し、上記基本方針を基に警察や弁護士などの外部専門機関と連携した対応が必要不可欠となるでしょう。

 また、反社は組織をターゲットにする場合、その組織を構成する「人」にまずは的を絞ります。今回の場合も特定の支店の特定の個人の隙をつくことで組織の深部に入り込むことが可能になりました。

 組織を構成する個の防御の意識醸成はもちろんのことですが、組織が個の責任に依存せず組織全体として対応することの重要性を教訓とすべきです。