【KYCC Message#7】社長メッセージ(前期の総括と今期の抱負):飛内 尚正

AIのさらなる開発に注力し、システムの高精度化を図る 

あらゆる情報を活用できる「データの総合商社」へ

第6期(2024年3月期)総括

 この4月で当社は第7期を迎えました。2018年10月の創業以来、「日本に健全な経済取引を実現する」ことを第1のミッションとして堅持し、「KYC (Know Your Customer) を社会インフラ化する」ため、SaaS型ウェブサービスのコンプライアンスチェックツール「Risk Analyze」(リスクアナライズ)と⾼機能リスク情報検索システム「Solomon」(ソロモン)を継続して提供してまいりました。

総額4.2憶円の資金調達を実施 

 前期第6期を振り返りますとまず当社最大のトピックは、シリーズC投資ラウンドにおける第三者割当増資により総額4.2億円の資金調達を実施したことが挙げられます。引き受け先は既存投資家1社と新規投資家3社の合計4社です(詳細は2024年2月7日発表のプレスリリースを参照)。

 当社が有する専門性の高いテクノロジーが、健全経営を希求する企業を取り巻くコンプライアンス体制構築の社会課題の解決につながる可能性が高いと、投資家の皆さまに評価をいただいた結果と捉えています。

危機管理や安全レベルを海外KYC先進国の水準に引き上げる

 我が国の現状を顧みますと、諸外国に比べコンプライアンスに対する意識もさることながら、体制構築のための有効なツール、サービスが国内には存在しないなど、それを構築するさまざまな障壁があります。

 テロ対策やマネー・ローンダリング、人権デューデリジェンスに対する全世界的な意識の高まりを日本社会は認識しつつも、強固な体制構築に世界から一歩も二歩も遅れをとっている現状も同時に認識しています。

 それでも遅ればせながら我が国の政策上においても、近年ようやくコンプライアンスチェックの重要性に関する認識は高まりを見せています。2021年8月に公表されたFATF第4次対日相互審査結果を踏まえ、同年11月、金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の公表はその代表的なものであり、政府も国際協調を図る取り組みに注力し始めています。

売上高は前期比2倍、目標の1.5倍を達成 

 そのような状況の中、市場、社会、企業も政府に同調する趨勢を見せており、経営者の認識や意識も確実に変化しています。当社が有する専門性の高いテクノロジーが社会課題の解決への糸口になるものと考えております。特にFATFの審査結果公表で注目された継続的顧客管理(ongoing due diligence)を可能ならしめるシステムは一般的に難易度が高く、当社以外のサービスでは実現不可能なものでした。

 その結果として、まさにマーケットフォローの背景を受けて既存の仕組みや考え方をブレークスルーしている当社のデータベースやシステムは、市場から受け入れられていると認識しています。当社の前期(第6期)の業績は、このような市場の動向の高まりに応えることで売上高が前々期(第5期)比2倍、売上目標は1.5倍を達成いたしました。今後もその期待に応えるべく、日本社会の危機管理や安全レベルを海外KYC先進国の水準に引き上げ、健全な経済取引の実現を牽引する存在として事業をより一層強力に推進する所存です。

■第7期(2025年3月期)の抱負

上場企業やIPO準備企業に求められる迅速で正確なリスク管理

 当社顧客の業種構成は、金融分野が約4割を占めます。次に割合が高い業種は、不動産やHRです。その他はあらゆる業種の一般事業者です。

 一方、顧客全体の4割が上場企業です。その他、IPO(新規株式公開)準備を含む未上場企業の割合が高い特徴があります。上場企業は膨大な数のステークホルダーと関係を築く立場にあるため、迅速で正確なリスク管理が必要不可欠なことは言うまでもありません。また金融系企業においてはガイドラインで定められた厳しい要件に自社体制を適応したものにする必要があるため、コンプライアンス意識は総じて高いものがあります。またIPO準備企業においてはその準備を進める過程で上場審査基準を満たすツールを求めざるを得ません。当然の流れとして、当社サービスへの関心が高まります。

 一方でコストを無尽蔵にかければ良いというものでもなく、企業にとって重要なのは実効性とコストです。それらを高次元でバランスさせた当社サービスは既存のものと一線を画す優位性があると言えるのではないでしょうか。

 この需要は何も上場企業やIPO準備会社に限ったことではなりません。我が国のすべての規模、業種の企業が自社の健全性を担保し、利益を生み出し永続し続ける企業として存在するためにはコンプライアンス体制の構築が不可欠なものとなっています。そのためいかに自社の体制を有効かつコストとのバランスを図り実現するかはあらゆる業種、あらゆる企業ステージにおいても非常に関心の高いものです。

売上高の目標は前期比2倍 サービスの認知促進を図る

 今期の売上目標は前期の2倍を目指します。注力する主な取り組みは次の三つです。

 一つ目は、企業としての知名度と当社サービスの認知促進を図ります。当社サービスは、お客様に当社の利便性や効果を納得いただいた結果として、導入を決定いただく確度が非常に高いことが特徴です。

 ただ、まだまだ当社の認知度が低いと認識しています。より多くのお客様に当社の存在を認知いただき、その有用性を理解いただきサービスの普及・浸透を図ります。

 二つ目は、AI(人工知能)の高度化の開発に注力します。データのカバー範囲を拡充し、システムの高精度化を図ります。特に上半期は、既存のサービス「Risk Analyze」(リスクアナライズ)バージョン2(第2世代)の発表(今秋)に向け、開発に注力します。

 三つ目は、当社の企業としての成長を見据え組織の強化を図ります。まずは人員の増強を優先的に実施し、営業・開発・管理の各部門において増強を図ります。当社の成長を共に支え合える人材を求め、まさに全方位にて採用活動にも注力いたします。

あらゆる情報を活用できる「データの総合商社」へ

 健全な経済社会の実現に向けた国際協調への取り組みにおいて企業コンプライアンスが強化される環境下、当社の存在意義はますます高まるばかりと考えています。同時にそれを担う事業者として当社が果たす役割は、年々幅広くまた厳格なものとなっています。

 既存の労働集約的な手法やデータでは、時代の変化に到底対応することはできません。本分野における改革者として社会の要請を的確につかみ、期待に応えられる企業であり続ける覚悟で臨まねばなりません。

 今期も創業時から掲げる「KYCの社会インフラ化」をより一層推進するとともに、その先にはリスク情報にとどまらず、あらゆる情報を活用できる「データの総合商社」へと成長を遂げる将来像を描いています。

 「情報」により社会全体に受益をもたらす企業を目指し、当社が担う責務はますます高まるものと考えています。