【KYC コラム】「リスク情報収集AI技術」解体新書 #4(2)

~KYCコンサルティングのコア・コンピタンス(競争優位の源泉)~

#4 リスク情報収集AI技術を解き明かす

(2)日本企業に求められる国際水準のコンプライアンスチェック
前回のコラムでは、従来のコンプライアンスチェック手法や業務上の課題について解説しました。今回は、改めてコンプライアンスチェックの重要性と実務上の課題について整理しながら解説します。

時代の変化に伴ったリスク管理 企業に求められるコンプライアンスチェックの重要性増す

 コンプライアンスチェックの重要性と実務上の課題について、具体的な事例を紹介しながら解説します。コンプライアンスに対する意識が高い大手企業であっても、何かを機に反社(反社会的勢力)とつながりを持ち、付き合いが明るみに出る事態が毎年どこかで起こっています。ニュースなどで耳にすることも珍しくありません。

 企業が求められるコンプライアンスチェックに関する要件は、年々増え続けています。その要件となる法令や条例には、反社対策・AML(マネーロンダリング防止)・CFT(テロ資金供与対策)の関連法令や、反社会的勢力による被害を防止するための基本原則などがあります。法規制は、重大な事件などが起こった後からルールが加えられることが多いため、コンプライアンスチェックに関しても同様のことが起きています。 

 従来のコンプライアンスチェック(反社チェック)は、基本的に暴力団と付き合いがないかを確認するものでした。ですが、現在のコンプライアンスチェックは、反社チェックに加え、金融犯罪や経済犯罪などに巻き込まれないかといったリスクチェックが対象に含まれます。また、2024年3月に、政府は、子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する制度「日本版DBS」を導入するための法案を19日、閣議決定しました。時代の変化に伴って、企業に求められるコンプライアンスチェックの重要性は高まっているのです。

他国へ悪影響を与える日本企業の脆弱なリスク管理 国際社会と同等のコンプライアンスチェック水準へ

 日本の法律には、「暴力団」と定められた要項が設けてあります。日本の反社を代表する指定暴力団は、自分たちの存在を世間に公にして看板を掲げて活動します。一方、海外のマフィアの場合、自分たちの会社を公にせず、アンダーグラウンドで活動するため、存在や活動自体がつかめません。近年、日本においても「半グレ」(指定暴力団に属さない新興犯罪グループ)と呼ばれる、マフィアに近い組織による犯罪が増加しており、企業犯罪は複雑で多様化しています。 

 中でも最も注意が必要なものは、マネロン(マネーロンダリング)対策です。金融犯罪はさまざまなテクノロジーを駆使した方法で仕掛けられます。例えば、「英国は、アメリカは高い水準でマネロン対策がが完璧に整備されているから犯罪に巻き込まれる恐れはない」ということはありません。もし、日本にマネロン対策の穴(不備)があれば、その金融機関や仕組みを悪用した活動が可能になるのです。国ごとの対策や状況に関係なく、対策の不備を利用すれば、全世界どこででも犯罪が生まれます。

 犯罪を減らすには、国際的にコンプライアンスチェックの必要性や理解を広め、インフラ化するレベルまで働き掛ける必要があります。日本企業の脆弱な仕組みを使い、それらの犯罪がまかり通ってしまえば、結果的に強固な対応策を講じている他国へ悪影響を与える事態につながります。それを防ぐためにも、早急に日本のコンプライアンスチェック水準を、国際社会と同等に引き上げることが求められます。 

次回は、KYCコンサルティングが従来の手法からどのような革新を起こし、業務上の課題解決を図っているか、その方法を紹介します。