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適正に!正確に!弁護士の活用で強化したい「​​反社チェック」の最前線

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現代の企業経営では、リスク管理の根幹になる施策としての「反社チェック」がますます重要性を増しています。反社チェックは、新規の取引先や顧客のみならず、既存取引の見直しや採用活動、役員・従業員の調査など、あらゆるビジネスシーンで求められるようになってきました。反社チェック体制の構築と運用は、急務といえます。

専門的な知識が不可欠になる反社チェック体制の構築と運用で活用したいのが、法務の専門家である弁護士です。弁護士は、企業が目指す「適正・正確な反社チェック」の実現に向け、積極的な支援に当たってくれます。

当記事では、具体的な事例や最新のITソリューション、カスタム・スクリーニングの活用事例を交えながら、反社チェックにおける弁護士の役割とその最前線を解説します。

高まる反社チェックの重要性

1. 多様化・複雑化する反社リスク

反社会的勢力(以下、反社)との関係を見落としたり見過ごしたりすることで、信用失墜や取引停止、法的制裁など甚大な損害を受ける企業が後を絶ちません。国内外の社会からは、企業に対しより厳格な姿勢が求められるようになってきました。反社との関係を徹底的に排除するため企業は、主体的に反社チェックを推進していく必要があります。

反社の定義や実態は多様化しています。暴力団のみならず、匿名で活動する流動型犯罪グループや準暴力団、半グレ集団など、グレーゾーンも広がっているのが現状です。

多様化・複雑化するリスクに対して、企業はより主体的に対応していく必要があります。今後も、社会的責任を果たすための取り組みが求められ続けるでしょう。

2. 犯収法改正、マネーロンダリング対策は強化へ

反社チェックの重要性が高まる背景には、コンプライアンス意識の向上があります。犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正によって、マネーロンダリング対策が強化されていることも要因です。
制度の実効性や企業のリスク管理体制は、日本を「重点フォローアップ国」とする政府間組織FATF(金融活動作業部会)から過去4回にわたり改善を求められています。第5次になる今後の審査では、2028年をめどに改善の成果が厳しく問われる見通しです。

企業は幅広い範囲で反社チェックを行い、国内外から求められる社会的責任を果たしつつ健全な経営基盤を確立しなければなりません。

3. 活用したい「弁護士ならではの専門性」

反社チェックの対象は、取引先企業や個人のみならず、役員・従業員・主要取引先・関係会社にまで拡大しています。企業は自ら反社チェック基準を策定し、その基準に基づいた運用体制を確立する必要があります。

反社チェックでは、適正な範囲設定と正確な同一性確認が不可欠です。あいまいな基準はリスクの見逃しや誤認による信用毀損(きそん)につながります。表面的な情報のみにとどめず、背後関係まで徹底的に調査する姿勢もやはり不可欠です。同姓同名や類似企業名による誤判定リスクについても、企業の主体的な対策が求められます。

法的知見や高度な調査権限など弁護士ならではの専門性は、反社チェックの要件整備のみならず反社チェックを運用していく上で、不測の事態の防止にも大きく貢献します。

「適正・正確な反社チェック」に弁護士が果たす役割

弁護士は法的知見や高度な調査権限を駆使し、企業の反社チェック体制を整備・強化するとともに、担当者が主体的に反社チェックを運用・実行していける組織づくりを支援します。

1. 継続的なアップデート

「適正・正確な反社チェック」の実効性向上・維持には、定期的な基準の見直しが不可欠です。弁護士は最新情報や情勢を踏まえ、法的知見を活用して企業の反社チェック基準と運用体制を継続的にアップデートします。

2. 社内教育や事例共有

反社チェック体制の強化には、社内での情報共有やコンプライアンス教育も重要です。定期的な研修や事例共有を通して弁護士は、実務担当者のみならず経営層や現場担当者にも広く意識を浸透させ、企業全体のリスク耐性を高めます。

3. 反社チェックの実施を客観的に証明

弁護士名義の調査報告書は、反社チェックの実施を客観的に証明する文書です。万が一問題が発覚した場合、企業が合理的な注意義務を果たした証拠となり、法的責任の回避につなげることができます。

法的責任の回避は世論の納得につながることから、SNSにおける「炎上」など社会的制裁の沈静化も期待できます。

4. 法的措置・高度な調査の実行

疑わしい関係先が判明した場合の対応や、反社との関係遮断に関する法的措置は、弁護士の専門性が求められる場面です。弁護士は警察への照会や暴力団排除条例に基づく情報取得の代理人を務め、企業単独では難しい調査を円滑に進めます。

弁護士主導の反社チェック事例

弁護士が反社チェック体制の設計や監査、交渉・法的措置を担う事例は、さまざまな企業で当たり前に見られるようになりました。

「できるだけのことを行っている」という社会的責任を追求する姿勢のアピールやブランドイメージの向上につなげたいと、積極的に弁護士を起用するケースもあるようです。

1. メリットを最大限に活用|大手企業の事例

高まる反社チェックの重要性と企業が果たすべき社会的責任の増大を背景に、反社チェック専門の弁護士や事務所と契約し、積極的に活用する大手企業が増えています。

弁護士はウェブ調査のみならず、公的資料や裁判例、行政処分歴の調査にも対応し、所属弁護士会を通じた情報照会も行います。反社との関係が疑われる場合、交渉や法的措置の代理人を務めるほかマスコミ対応も担い、被害拡大防止にも寄与します。

2. 株式公開の実現に向けて|IPO準備企業の事例

IPO(株式公開)準備企業は、上場審査で反社チェック体制の厳格さが問われるため、弁護士による体制構築や監査が不可欠です。

特に厳しく問われるのは、経営陣や主要株主、取引先が反社と無関係かどうかです。弁護士は社内外の調査を指揮し、法的観点から調査結果を精査します。疑わしい取引先が見つかった場合は、暴力団排除推進センターを利用し警察が保有するデータを照会するなど、調査に当たります。必要に応じて契約解除や法的措置などの手段を取るのも弁護士の役割です。

弁護士活用のポイントと注意点

反社チェックにおける弁護士の活用には、いくつかのポイントがあります。専門性のばらつきや費用、スピード感が課題になることもあるため、弁護士の選定が特に重要といえます。

1. 専門性や経験、知見がポイント

「適正・正確な反社チェック」という課題を明確に理解し、専門的に対応できる弁護士を選定しましょう。弁護士はそれぞれ専門分野や得意分野が異なり、反社チェック分野を専門的に担うには経験や知見が十分でない場合もあります。

たとえば企業と契約している顧問弁護士は、必ずしも反社チェックに精通しているとは限りません。身近で頼りやすい存在ですが、注意したいところです。

なお弁護士は、所属する弁護士会や司法研修所時代の同期などに豊富な人脈を構築しているケースがほとんどです。顧問弁護士への相談を、反社チェックに強い弁護士の紹介につなげるのも一手です。

2. 費用やスピード感には課題も

弁護士の活用は、費用が高額になる傾向があります。依頼後の調査には、一定の日数がかかるところにも注意が必要です。企業は、コストとスピード感のバランスを意識しながら、うまく弁護士を活用していく必要があります。

3. 外部リソースにも目を向けたい

反社チェックは、全ての企業に求められる共通の社会的責任です。せっかく社会的責任を意識し、反社チェックの重要性を理解していても、弁護士を探したり選んだりするという反社チェックへの入り口でつまずいてしまうと、「適正・正確な反社チェック」の実現は遠のくばかりです。

すぐに反社チェックを始めたい場合には、弁護士に代わる外部リソースの活用にも目を向けたいところです。

外部リソースの代表格「ITソリューション」

弁護士に代わる外部リソースの代表格が、ITソリューションです。近年では、AIやビッグデータを活用した反社チェックツールが登場し、従来の手作業による調査では見落としがちなリスクも高精度で検出できるようになっています。

1. 高度化する反社チェックツール

最新の反社チェックツールは、国内外の膨大なメディアや官公庁の配信情報を自動で収集します。過去の裁判例や新聞記事、SNSなどの幅広い情報源も対象です。行政処分歴や訴訟歴、風評も同時にチェックします。チェックにより、反社・逮捕歴のみならず、より広範なリスク情報を網羅的に把握できます。

2. 企業ごとに設計するカスタム・スクリーニング

カスタム・スクリーニングとは、企業ごとの業種や取引特性、リスク許容度に応じ、調査対象や判定基準、チェック項目を柔軟に設計した反社チェックツールを運用する手法です。特定の業界や地域、取引規模に合わせてスクリーニング条件をカスタマイズすれば、必要な情報だけを重点的に検出・判断できるようになります。

中には、既存手法の新聞記事データベースやウェブ検索を重視する企業向けに複数のデータソースを統合し、リスク検出力と判断精度を両立する高精度スクリーニングを提供している反社チェックツールもあります。

カスタム・スクリーニングは、過剰調査や見落としを防ぎ、効率的かつ実効性の高い反社チェックだといえます。

3. コンサルティングの活用も

反社チェックツールとカスタム・スクリーニングに弁護士が行う同一性確認や取引判断支援を組み合わせると、企業のリスク管理は一段と強化できます。

強化に当たっては、ベンダーが提供しているコンサルティングサービスを活用できます。コンサルティングは、ぜひ積極的に受けておきたいところです。

「適正・正確な反社チェック」はリスク管理の最前線

企業経営のリスク管理の中心となる反社チェックは、法令順守や企業価値の維持に不可欠です。企業には取引判定基準の設定や運用体制の整備が求められています。適正かつ正確な反社チェックを通じて、主体的に反社リスクと向き合う姿勢を明確に示しましょう。

反社チェックでは、個人情報保護法やプライバシー権への十分な配慮も求められます。調査範囲や方法が過剰になると、法的リスクや社会的批判を招く可能性があります。法令順守とリスク管理の両立は欠かせないところです。

継続的な取り組みも重要です。社会情勢や法令改正、取引先状況の変化などに応じて、最新のリスクに対応できる体制を維持することが求められます。必要に応じ弁護士など専門家の力も借りながら、判定基準や運用体制は柔軟に見直す姿勢が大切です。